葛城奈海
27年4月11日 産経新聞「直球&曲球」掲載
先月16日の参院予算委員会で自民党の三原じゅん子議員は「八紘一宇」について「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」と述べた。日頃、「八紘一宇」のルーツである「八紘為宇」こそ日本が取り戻すべき理念だと考えていた私からすれば、まさに我が意を得たりの発言であった。
かくいう私もこれを「好戦的なナショナリストのスローガン」だと思い込んでいたひとりだ。それが、初代神武天皇の「橿原建都の詔」を学び、「天の下にひとつの家のような世界を創ろう」という原義を知るに及んで、己が先入観と不勉強を恥じた。
拉致問題ひとつとっても、被害者を「自分の家族」として痛みを分かち合えるのなら何十年も見捨てたままになどできないであろう。この広大な理想の対象は日本国のみに留まらない。
先の大戦で渋谷健一特攻隊長は、幼い娘たちに「世界に平和がおとづれて万民太平の幸をうけるまで懸命の勉強することが大切なり」と書き遺している。われわれ日本人は他者を蹴落としてでも自分さえ勝てばいい、他国を踏み躙っても自国さえ繁栄すればいいといった考え方を良しとしない。日本人のDNAにはこの壮大な理念が埋め込まれているのではないか。
だからこそ、欧米列強の強圧的な植民地支配とは対照的な、アジア太平洋諸国での統治が、先般の天皇、皇后両陛下のパラオご訪問でも示されたような現地の人々の熱烈な親日感情を育んだのであろう。
戦後70年の今こそ、日本人が自ら受け継ぐこの宝のような価値観を自覚し、そこに立ち返ることが、弱肉強食の世界を「強者が弱者を助け共に生きる世」へと導く鍵になるように思えてならない。
「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」とは、極論すれば「八紘為宇」という建国の理念を取り戻すことではあるまいか。
三原発言へのGHQ史観そのものの批判にはまず勉強をと言いたいが、保守層にこれを擁護する動きが希薄だったのも残念だ。議員の経歴を理由に同発言を軽視する輩には、そうした「色眼鏡」こそ戦後体制を延命させてきたことを肝に銘じてほしい。
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